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初心者の方には少々マニアックかも知れません! 読み飛ばしてください。特に影響ありません。
​今回の記事は生きるレジェンドセーラー、ロベルト・シェイドの‘動き’に関する考察を翻訳したものです。レーザーセーラーは必読!?1900年代の古い記事です。内容についてはよく考えて参考にしてください。

序論

 人によっては“露骨な動作”と、他の人には“卓越した動作”と呼ぶかもしれない。呼び方はどうでもいい。事実ゴールドメダリストはその動きをし、速いのだ。その“動き”とはアップウィンドのテクニックで、波を突っ切るために、時に激しいボティモーションを取りいれたものだ。「動くのは違反だ!」と叫ぶまえに、二つのことを理解して欲しい。

第一に、ワールドレベルのレーザーセーラーでただ無抵抗にボートに座っている人は一人もいない。波がある限り、誰もが動き続けている。第二に、一波一回のボディアクションは違反ではない。

 シェイドを3回ものワールドチャンピオンにしたものはスマートなセーリング、驚くべき体の強さ、柔軟さ、磨かれたテクニック―彼のライバル達のほとんどができない体の動き―のすべてだ。なぜあなたが気にしなくてはいけないか?軽いボートに乗るすべての人に向け解説をしよう。このキネティクスを使えば、みな波を早く走ることができるのだ。

スモールボートのセーリングでは、“キネティクス”とは、体を使ってボートの動きを変えることだ。いくつかの動作は明らかに42条で定義され禁止されている。例えば、スカリングやパンピングは、急速に、繰り返し行われれば違反である。しかし、一回の動作ならば、結果的にボートスピードを加速させたとしても、必ず違反になる訳ではない。ボートをコントロールしたり、ステアリングを助けたりするための動きならばOKなのだ。

 ラフウォーターでのアップウィンドは波との戦いになる。もし、あなたがただ漫然とハイクするだけで戦いを拒否すれば、波は容赦なくボートを叩き、風下へと追いやるだろう。シェイドスタイルを選択し、かしこくキネティクスを使うならば、ローリングやピッチングを減らし、ボートをよりまっすぐに走らせることができるだろう。波の悪影響を最小限にできるのだ。禁止されている動作をしない限り、これは違反ではないのだ。

 シェイドの動きを見た後、今すぐにでもボートに乗り込み、トライしてみたくなるだろう。ここに注意しておく。この写真(*割愛)のシェイドは短いティラーエクステンションをつかっている。彼はレースの時には8インチ長いエクスエンテョンを使っている。そのため、より大きく、強く波に向かっていくことができるのだ。多くのトップセーラー達が、シェイドがこの動きをして病院送りにならないことに頭を悩ませ、称賛と驚きを持っているのだ。キネティクス。。。はあ、若返りたい!

1.波と出会う

 ボートが波に出会う瞬間、シェイドは胴体を後ろかつ外に投げ出して、ボートを風に向けるようにトルクをかけている。そしてティラーを風下側にジャブするようにして波を“パンチ”するのだ。波が切り立つほど、動きは大袈裟になる。激しい“波パンチ”はティラーを風下いっぱいまで突くことも珍しくはない。これらの動きは、バウと波からスプレーがでる時に腕と体がともに最大に延ばされるようにしなければならない。(ここは長いエクステンションが効果的なところ)

 よくあるミスはティラーを風下に押しながら、体重を後ろにやるかわりに前に投げ出すことだ。これはうまく働かない。なぜなら、前へトルクをかけることはバウを落とすことになるのに、逆にティラーは上ろうとさせているからだ。また、前へのトルクはウーチングと取られてしまう。これは違反だ。

 

​2.波の頂上での抜重

 波パンチをしたら直ぐに、シェイドはハードハイクの体勢から戻って体を上げ前にする。ボートにかけた力を抜くのだ。と同時に、ティラーを引く。これらの動きは波の頂点がちょうどシェイドの脚の下を過ぎる瞬間に体があがりティラーが一番風上にくるようにされる。これらの二つの動きはボートが波の頂点でベアするのを助け、波の背へのランディングがソフトになるのだ。この体の動きはマイルドな前へのトルクであり、急に体の動きを止めたりするものではないので、ウーチングとは言い難いだろう。

 ほとんどのディンギーセーラーは波の上での抜重の重要性を理解できず、やろうという人は十分に体を起こすのを失敗してしまう。シェイドのこの一連の動きは一般のレーザーセーラーにはひどく独特のものだ。

 

3.パワーランディング

 これこそがシェイドのテクニックの真骨頂ともいえる。レースコースの反対から混雑した艇団の中の彼を見分けることができるくらい彼のランディングはパワフルだ。ボートが波の谷へと降りる時、彼は激しく体重を後ろかつ外へ投げ出す。と同時にティラーを風下へ突く。ハイキングストラップを全力で裂くように使うことによって、ボートが波から空中へと飛び出すことを防いでいる。これがランディングをスムーズにし波の悪影響を最小限にしているのだ。

 多くのセーラーも波の谷間に降りるときティラーを風下に突いている。しかしその前に抜重をしていないがために、ストラップに激しく力をかけることができないのだ。シェイドの動きを見るとこの場面で腰から背中が最も伸ばされているのがわかる。トライする前にはかかりつけの整体師に相談を!

 

波のある海面で体を使うテクニック

スキーではでこぼこの上を滑る時には、膝をまげ、脚を浮かし、抜重しているだろう。スモールボートでの波も、テクニックは似たようなものだ。波がボートの下に入る時、ハイクアウトから少し起き上がる。そして波の頂点の上にきた時、再びハイクアウトを始めるのだ。これら二つのアクションの間にはボートとハイキングストラップは抜重されているのだ。

 波を超え、谷へ降りている時には体を最大限にのばし、最大の力をストラップにかけるのだ。注意すべきはこの“パワーハイク”は生易しい動きではない。ハイキングストラップをビスから根こそぎ抜き取ってしまうようなつもりでやるのだ。

波パンチは単に波の前面を上るときにヘッドアップするためのテクニックだが、そのタイミングが究極に重要となる。軽いボートを走らせるときに、小さい波ではやさしいステアリングが効果的だ。しかし、かなり荒れた波に出くわすことはしょっちゅうで、もし、そんな時に“パンチ”を使わないなら、波はバウを掴んで風下に投げ捨てるだろう。そのパンチとは風下にむかってティラーをジャブすることだ。時にはティラーを押す様に速く、大きいだろう。もしこの“まばたき”程度の動きが正確にできたなら、ボートは完全にまっすぐ走る。ティラーで生じる横向きの力とそれと反対向きの波の力が釣り合うからだ。これはスカリングとは異なる。大きな波の一つに一回しかなされないし、ティラーはセンターラインに対し片側にしか動かないからだ。

 

トルキングこのラダーの代わりに体を使うというステアリングテクニックは一方向-後ろ―に使われれば違反ではない。体重を後ろに投げればセンターボードを支点とした“トルク”によってボートは風上を向きやすくなる。“波パンチ”とうまく融合すれば、波によって風下へ流されるのを防ぐことができる。前へのトルクはボートをベアさせるが、これは違反となり得る。ルールでウーチングと判断されるからだ。

肩を下げる:

波の間のフラットウォーターではシェイドは少しバウの方に傾いて、肩を下げるようにハイクしている。これはバウを沈め、喫水線を長くし、よりウェザーを作るようにボートバランスを変える。これはフラットウォーターでまっすぐ走りやすくするとともに、この間に休むこともできる。

 

Original: Poetry in motion by Ed Adams

​​Translated by Kaoru ARAI

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